外の世界に出てみて『自分で考えて形にする』力が培われていたんだな、と気づきました。

外の世界に出てみて『自分で考えて形にする』力が培われていたんだな、と気づきました。

第19期卒業生 杉村朋さん 後編

杉村朋香さん
杉村朋香さんは現在、シュタイナー幼児教育を取り入れた嶺町幼稚園で教諭として働いています。ご自身も幼稚園から高校までシュタイナー教育を受けて育った朋香さん。思春期の頃には反発する気持ちもあったそうですが、今は教える側として深くシュタイナー教育に関っています。後編では高等部を卒業して幼児教育に携わるようになるまでのお話を伺います。
 

卒業後、幼児教育に携わろうと決めたのはいつ頃なのでしょうか?

兄弟が多く、ずっと幼い妹や弟が家にいたこともあり、子どもと遊ぶのが好きでした。それでなんとなく8年生の卒業文集の夢に『保育士』と書いたんです。その時はなんとなく書いたのですが、文字として書いたことがずっと自分の中に残り、改めて将来を考えた時にやっぱり幼稚園や保育園で子どもと関わっていきたい、と思うようになりました。高等部では福祉実習があり、シュタイナー幼児教育を実践していない保育園に実習に行く機会がありました。はじめてシュタイナー園以外の保育園で子どもたちと過ごし、シュタイナー教育を客観的に捉える機会になりました。卒業後は幼稚園教諭と保育士の資格を取れる専門学校に進学することを決め、3年間で両方の資格を取得しました。

シュタイナー学園を卒業し、専門学校に入りギャップのようなものはありましたか?

シュタイナー学園という守られた世界から出ていく不安はありました。ですが、いざ専門学校に入ったら、みんなと同じじゃなくていい、と思える自分もいたし、周りもそんなわたしを認めてくれました。例えば保育の教材を作る時にみんなパッとキャラクターの絵を描くけど、わたしはキャラクターを全然知らず、描けない。でも木や花を題材に描けばいいや、という感じで困ることはありませんでした。幼児教育や保育に携わる学びは明確な答えがない、大きな問いを投げかけられることが多いです。そういった時、教科書がなく正解・不正解で区切らないシュタイナー教育の学びをしてきたわたしは、困ることなく自分の思いや考えを伝えることができました。みんなが『芯がある意見を言える』『自分を持っている』と認めてくれたことで、外の世界に出て初めて自分が育んできたものや、強みを知ることができた気もしました。

専門学校を卒業してすぐ、シュタイナー教育を取り入れている幼稚園で勤められたそうですね

現場に出る時、どんな園で教諭をするかは自分で選ぶことができます。卒業したらシュタイナー園で働きたい、という想いは専門学校時代から持っていました。実習などで一般の園にも行ったのですが、子どもの工作やお絵描きひとつとっても、苦手な子の手に大人が手を添えて作ったり、描いたりと、子ども自身ではなく親御さんが見て喜ぶようなものを作っているような在り方に、疑問をもちました。一人ひとりのやりたいこと、可能性を大事にしながら、子ども達と向き合っていきたいと思い、シュタイナー園を探して今の嶺町幼稚園に勤めることになりました。

今年からは担任としてクラスも持っていると聞きました

今は年少さんのクラスで11人の子どもたちを担任として見守っています。成長はそれぞれ、早かったり遅かったりあるけれど、子どもたち一人ひとり、みんなたくさんの可能性を持っている。わたし自身も幼稚園の頃、友達と遊べない子だったんです。輪の中に入らず、ひとりみんなを観察しているような子でした。通っていたシュタイナー幼稚園の先生は、そういうわたしを尊重してくれていたな、と思うんです。一人ひとりのやりたいこと、可能性を大事に見守ることで、子どもがいずれ、自分を自由に表現できる力を育んでいけたらと思うし、その力を持っていると信じて、子どもたちと関わっていきたいです。

最後に、シュタイナー教育で得たと思うものがあれば教えてください

学園に通っていた時は、何も考えていなかったんです(笑)。でも、外の世界に出てみて『自分で考えて形にする』力が培われていたんだな、と気づきました。保育の世界は正解がなく、自分で考え自分で決めて動いていかなくてはいけない。専門学校の同級生が『そんなこと言われても…』と困っているような時も、わたしは困ったと感じることはなかったんです。それがシュタイナー学園での12年間で自然と身についていたわたしの力なのだと今では思えます。


社会に出て、自分が育んできた力に気づいた朋香さん。シュタイナー教育を受けた当事者だからこそ見えること、感じること。そんな実感を持った朋香さんが、今度は見守る側となり、子どもたちを育んでおられることは、大きな循環のようにも感じました。朋香さん、そして朋香さんの見守る子どもたちの未来にもたくさんの希望を感じるような、そんなお話でした。ありがとうございました。


ライター:中村暁野