『一番高い山に登れ』目の前にある山は高いけれど、ここを登っていきたい、今もそう思っています。

『一番高い山に登れ』目の前にある山は高いけれど、ここを登っていきたい、今もそう思っています。

第10期生 川上純さん 後編

川上純さん
シュタイナー学園第10期生の川上純さん。学園在学中から「人の助けになることがしたい」という夢を持つようになり、卒業後はイギリスのキャンプヒル(※障がいを持つ人達と共に暮らす共同体)でボランティアをした後に帰国し、早稲田大学、東京大学大学院で国際紛争問題について学ぶ道を選ばれました。さまざまな国や人の立場や不平等について考え続けている川上さん。学ぶことを楽しみ、深め、夢を見つけた前編に続き、後編では卒業後のお話を伺います。

人を助けること、そして国際的な活動がしたいと思われた後、どのような進路を考えたのでしょうか?

自分の中で大きなテーマが見つかったものの、まだまだ漠然としていた中で、ボランティアとして働きながら暮らせる『キャンプヒル』に行ってみようと思いました。シュタイナー学園の先生方に自分の思いを話している中で音楽の古賀先生に『あなた、キャンプヒルがあるじゃない』と言っていただいたこともきっかけになりました。募集があったイギリスのキャンプヒルに応募し、障がいを持った方々と共同生活を送りながらキャンプヒル内のカフェのキッチンスタッフとして働きました。

出発時、語学は習得されていたのでしょうか?

文法や単語は知っていても、日常会話として喋ったことがない状態で行ったので、最初はキッチンで働きながら『おたま』ってなんていうのだろう⁈ 辞書どこ~~⁈ という感じでした。生活英語を、身をもって学んだという感じです。キャンプヒルにいた時のことは振り返ると楽しかったことしか浮かばないですし、『人を助けたい』という思いに対して、とても根本的なことを気づかせてもらう機会にもなりました。それまで『困っている人のことをとにかく助けてあげたい』と思っていたのですが、例えば障がいを持っている方も自分で出来ること、自分でしたいことがたくさんあり、共に働けるのだ、ということです。言葉にしてしまうと当たり前のように感じるのですが、それを本当に実感した時間でした。

1年間のボランティア期間を終え、進学の道を選ばれました

帰国して人を助けるためには知識がいる、と思い大学進学を決めました。『困っている人がいる』問題は、世界にあまりにもたくさんありますが、その中でもやはり紛争問題に取り組みたいと思い、まず世界の政治や歴史を幅広く学べる早稲田大学の国際教養学部に進学しました。もともと知らないことを知ることが好きなので、アフリカや旧ユーゴスラビアなど、それまで深く触れたことのなかった国々の政治や歴史を学び、そこにある問題を知ることには学ぶ喜びを感じた4年でした。卒業後もまだ学びを続けたいと思い、東京大学の大学院に進学し、今は修士の学位をひとつ取ったところです。もうひとつ修士の学位を取るか博士を取るかを考えながら、学び続けるための資金を得るため、現在は大学で働いています。研究のためには専門的な本にアクセスできる環境下で働きたいという思いがあり(笑)今はこの仕事をしています。まだまだ学びの途中ではあるのですが、将来は自分の研究テーマについて伝える側に立ちたいという思いを持っています。紛争地域に行って現地の人を直接助けることからは離れてしまうかもしれないのですが、紛争問題がなぜ起きるのか関心を持つ人が増えてほしいと思うのです。今、社会問題になっているインターネット上での誹謗中傷も、実は紛争問題とも繋がっている部分もあると思います。自分とはちがう人の気持ちや立場を考える、思いやる。人として当たり前のことですが、なぜそれができていないのか。そんな根本的なことを改めて多くの人が考えていく、そんなきっかけを作れたらと思うのです。

最後にシュタイナー教育を通して得たと思うものがあれば教えていただけますか

自分で目標を設定して、自力で進んでいく力でしょうか。教科書を見て出された問題を解くような授業ではなく、先生の話を聞き、自分でノートを作り上げていくことが重要な毎日の授業でもその力がついたと思いますし、低学年から高等部までたくさんの劇に取り組み、自分とはちがうクラスメイト一人ひとりがそれぞれの力を出し合い、一緒に何かを作り上げることを通して、他者を尊敬することや尊重することを学びました。あとは、担任の先生にいただいた、自分の詩※。わたしの詩は「山に登れ」というタイトルでした。『一番高い山に登れ』と。先生にいただいた、わたしのためのその言葉が今も根っこの部分で力になっている気がします。目の前にある山は高いけれど、ここを登っていきたい、今もそう思っています。
※シュタイナー学園では生徒一人ひとりが『自分の詩』を持っています。担任の教師が成長に合わせて、その子のための詩を作り渡します

シュタイナー教育を通して育んだ力で自分の道を進み、登っていく川上さんの今後を楽しみに応援したいと思います。


ライター:中村暁野